Skip to content

Latest commit

 

History

History
79 lines (58 loc) · 9.49 KB

design.md

File metadata and controls

79 lines (58 loc) · 9.49 KB

新生児ギャン泣きオンコール対応フローチャートのデザイン

はじめに

3月中旬に育児を開始して以来、最も体力と時間を削られるのが「子供を泣き止ませる」ことでした。 ギャン泣きは24時間いつ起きるか予想ができない上に、声が裏返るほどの大きさで目の前で悲壮な顔で泣かれると、寝不足も重なり(私のような育児に慣れていない親は特に)焦って冷静な対処ができなくなってしまいます。

ただ、私には似たような体験を「オンコール対応」という仕事でしたことがあるなという記憶がありました。

現在は育休中ですが、普段はシステムの開発・運用を行うエンジニアをしています。 24時間稼働することが求められるシステムの運用においては、緊急対応が必要なインシデント(システム障害やセキュリティ問題)が発生した場合に即座に対応できるよう、対応者や対応方法をあらかじめ決めておく仕組みを「オンコール対応」と呼び、私も日々担当していました。

システムに障害が起きると私のスマホは大音量で鳴り、PCを開くとSNS上でのお客さまからの反応やシステムエラーのログがリアルタイムに流れるのを見て焦ります。 が、そこで障害の原因を冷静に1つずつ潰してなるべく早く障害を解決しようと試みます。 同僚が「育児は24時間オンコールだ」と言っていたのを思い出しました。

ギャン泣きは赤ちゃんにとって正常なことでシステム障害とは異なりますが、あらかじめ決められた対応方法があれば役立つ点は同じじゃないかな、と思ったのが作成のきっかけでした。 Web上で「泣き止ませる方法」を調べると様々な情報が出てくるものの、方法を列挙しているだけのものが多く優先度が分からないし、いまいち自分が納得できるほどには整備されていなかったため、自分でフローチャート作ることを決意しました。

チャートができてからは、「さて、次はげっぷ出すか…」「一度オムツチェックに戻るか…あ、またウンチ出てるじゃん…」と頭の中で作戦を練れるようになり、前よりも少しだけ冷静になれたような気がします。

作ったものがどの家庭にも当てはまるものではなく、医学的見地、データに基づいたものでないことは重々承知ですが、このチャートのおかげで泣き止んだ赤ちゃんや笑ってくれた親が1人でも居ればいいなと思います。

ゴールとゴールでないこと

このフローチャート考案時のタイトルは当初「新生児啼泣対応プロトコール」でした。 あまりにも固い文言です。それではいけないと思い、よりカジュアルなものに変えました。 医学書やIT技術書のような難解なものでなく、ベビーベッドのそばにA4用紙1枚で印刷しておいておけるような、 パッと見で理解しやすく読み手の笑いを誘うようなものにしたいです。

ゴール

  • 赤ちゃんを泣き止ませる方法がなく途方に暮れたりイライラする保育者をなくすこと
  • 何らかの不快を訴えて泣く赤ちゃんの原因を1つずつ潰し、なるべく早く取り除いてあげること
  • カジュアルであること。読み手の保育者をクスっと笑わせ育児のストレスを少しでも取り除くこと
  • 庶民的であること。フローに沿った対応をとるために広い家や高い商品が必要でないこと

ノンゴール

  • 100%ギャン泣きを止める医学的見地に基づいた完璧な対応フローを提供すること。

設計において考慮したこと

オムツ・授乳・抱っこは特別

私の経験上、赤ちゃんを泣き止ませる上で「オムツ替え・授乳・抱っこ」が最も泣き止む確率の高い方法でした。感覚的にはこの3つで息子の70%の泣き止ませはカバーできます。 こども家庭庁が提供している「赤ちゃんが泣きやまない~泣きへの理解と対処のために~ DVDガイドブック」の中でもまずこの3つが対処として最初にあげられているところからも、これは一般的な感覚から大きく外れてはいないだろうと予想しています。

そのため、ギャン泣き対応フローを作るときにこれら3つは特別視したいという思いがありました。 つまり、これらの対応後は(泣き止む確率も高いため)フローの上位に持ってくると同時に、対処後は一度「泣き止んだ?」への分岐を設け、一呼吸おいて状態をチェックするフローにしたかった。

現実的には、他の対応方法を行った後にも暗黙的に「泣き止んだ?」のチェックが入るのでしょうが、それらを忠実に記載してしまうと横長で可読性が低いフロー図になってしまう懸念がありあえてしませんでした。

上記3つで解決しなかったときに、げっぷでも音楽でも輸送でもなんでもいい、それらがたとえベストな順番でなくてもいいので、考えられる対応をたたみかけることで泣き止ませる手段を冷静に取り続けたい。 「どうしたらいいんだろう…」と途方にくれるのではなく、「あ、そういえばこういう方法もあったな」と半ば面白半分で対処を行ってもらえたらいいなと思っています。 私もギャン泣き中の息子をダメ元のやけくそで抱っこしながらスクワットし、狂言の動画をYoutubeで流すと泣き止んだ経験があります。

うちの息子に関して言うとおしゃぶりも上記3つと同程度のパワーを持っているのですが、一度癖になると抜けにくいなど賛否両論が多い対処でもあるので、特別視はやめています。

オムツのチェック頻度は高くてもいい

フローを1回ししたあとオムツを再度チェックに行くのはオーバヘッドが大きい、というコメントもあれば、 現場の声として「5分前に替えたはずのオムツにまたウンチがあった」という状況もよくある(から必要)というコメントもありました。 おむつのお知らせマークやサイドギャザーの隙間からおむつ状態をチェックするには数秒しかかからないことに鑑みて、一旦フローは現在の状態(=フローを1回まわすたびにおむつ状態をチェックする)を維持してみます。

病気の兆候

パンパース「赤ちゃんの病気の兆候」を全面的に参考にしました。 発熱や嘔吐、呼吸の異常だけでなく他にも様々な可能性があることは重々承知であるものの、それらを全て書き並べてしまうと可読性が失われるし、 全ての可能性を網羅することはきっと小児医療の専門家でも難しいことであろうと思い省略しました。 「フローチャートを利用する上で、異常を感じたら近くの小児科や小児救急電話相談に連絡することを躊躇しないでください」という 内容を付属のドキュメントに添えることで対応しようと思います。

対象月齢

このフローはおそらく月齢1ヶ月以降も使える部分が多いものの、テスターである自分の息子がまだ生後0ヶ月で このフローがこれからも通用するものなのか自信がなかったため一旦タイトルに「新生児」とつけてあります。 「月齢5ヶ月からはげっぷは自然と排出されることが多い」 「月齢3ヶ月を超えた場合は発熱時にアセトアミノフェンかイブプロフェンを与えて一旦様子を見ることができる」 「月齢6ヶ月を超えると寂しさや人見知りでも泣く」といった月齢ごとの違いがあるため、フローをカスタマイズする必要があります。 また、自我が芽生えてくると「自分でやりたいのにできない」「甘えたいからウソ泣き」といった複雑な泣きが増えるため、遅くとも1歳以降はフローは役に立たないのだろうと予想しています。

謝辞

「新生児育てながらこんなもの作る余裕あるんですか?」というご意見も複数いただきました。もっともだと思います。 この作業時間を取れたのは、妻、産後サポートに来てくれた義母、柔軟な育休制度を提供してくれた勤め先、頻繁に起きずスヤスヤと寝てくれる息子のおかげです。 レビューや色々な追加対応を共有してくれた方々も含めて、ありがとうございます。